裁判

皆さんは「免責」という言葉を聞いたことはありますか?免責とは、借金の返済が免除になることを指します。

免責は、許可されるケースがほとんどです。しかし場合によっては、免責の判定が下りなかったり、免責決定後に取り消しされてしまうことがあります。

そこで今回は、自己破産の免責が不許可になるケースや、免責後の生活の変化などを詳しく解説します。

不許可の確率は約4%!自己破産における免責とは

電球

そもそも自己破産とは、債務整理の一つです。

一定以上の価値がある財産を手放す代わりに、借金をゼロにして生活を1から立て直すことができる手続きを指します。

CHECK
借金の返済義務を免れることを「免責」と呼び、裁判所に免責許可を与えられることで自己破産が成立します。

 

自己破産は成功率の高い債務整理方法で、2014年の申立件数のうち、96.44%もの手続きが成功しています。※1
※1 https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2014/2014_hasan_kojinsaisei.pdf

同年の免責不許可の確率はなんと0%を記録しており、成功率が高いことがわかります。

WARNING
ただし、免責が不許可された年度もあります。免責不許可率が常に0%ではないことを理解しておきましょう。

自己破産では以下のように、一定以上の価値があれば財産を差し押さえられてしまう可能性が高いです。

ただし、当面の生活に必要となる最低限の必需品は、差し押さえの対象外となります。

差し押さえの対象 差し押さえの対象外
  • 土地や住宅などの不動産
  • 預貯金
  • 給料やボーナス、賞与など
  • 自動車
  • 生命保険の解約返戻金
  • 20万円以上の価値がある貴金属やブランド物のバッグなど
  • 99万円以下の現金
  • 20万円以下の財産
  • 生活に必要な家具や家電、寝具など
  • 業務に必要な機械など

免責決定後にり消しされることもある?自主的な取り消しも可能

紙幣

例えば、就職が決まるなど収入源が確保できた場合は、自己破産の取り消しを行えるのでしょうか?

安定した収入が見込めるならば、任意整理個人再生など、自己破産以外の債務整理で解決できる可能性も高まるでしょう。

次に、自己破産の手続きは取り消し可能なのか、タイミングや期間などと共に詳しく解説していきます。

借金を返済できるだけの収入が見込めるなら、債務整理をしなくて済むかもしれません。

自己破産の取り消し可能なタイミングと期間

カレンダー

自己破産申立て後に、別の方法で借金問題を解決できる見通しが立つ場合は、破産法29条※2に基づき自己破産の手続き開始が決定する前であれば、申立てを取り下げられます。

WARNING
裁判所が手続き開始決定を下した後は、申立てを取り下げることが出来ないので注意しましょう。

2014年に日弁連が行った「破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、調査対象となった申立件数1,235件のうち、2.75%が自主的に自己破産を取り下げています※3

手続きの開始は、申し立てを行った当日に決定することもあれば、翌月までかかることもあります。

WARNING
申立てから決定までは、それほど時間はかかりません。申し立てを行う前に、本当に自己破産すべきかどうか慎重に検討することが大切です。
申立ての取り下げに費用はかかるのか?
裁判所への費用は発生しません。しかし、弁護士や行政書士への費用については、個々の案件によるので確認が必要になります。

申立てを取り下げた場合の信用情報は?

自己破産の申立てを取り下げた場合、信用情報は債権者である金融機関がどこの信用情報機関に加盟しているかによって扱いが異なります。

CIC(主にクレジットカード会社が加盟) 自己破産申立てだけでは登録されないため、取下げをしたら破産に関する信用情報は登録されない。
JICC(主に消費者金融が加盟) 破産手続開始の申立ての旨は一旦は信用情報に登録されるが、加盟会社が申立て取り下げについて登録することで登録は削除される。
KSC(銀行や信用金庫、信用保証協会などが加盟) 自己破産の申立てのみでは登録されない。

※2 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075
※3 https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2014/2014_hasan_kojinsaisei.pdf

免責決定後に取り消しされることもある

NO

自主的な取り下げを行わずに自己破産が認められたとしても、中には決定後に免責が取り消しされてしまうケースもあります

免責が取り消されてしまう主な理由は、以下の2つです。

    • 詐欺破産罪によって有罪判決が下りた場合
    • 不正行為によって免責が許可され、債権者が免責取り消しの申し立てを行った場合
WARNING
自己破産の手続きによって、差し押さえの対象となる財産を隠ぺいした場合は、詐欺破産罪に問われる可能性があります。返済するつもりがないにも関わらず、借金を作った場合なども同様です。

不正行為を行うことがないよう、十分にご注意ください。

自己破産の免責後、活はどう変わる?

クレジットカード

自己破産の手続きが完了して免責が認められると、借金の返済から免れることができます

「これからは返済をしなくても良いんだ」と喜びたくなるかもしれませんが、果たして手放しに喜んで良いのでしょうか?

ここでは、免責後に変わること、変わらないことをそれぞれ解説していきます。

免責後に変わる3つのこと

免責後に変わることは、主に次の3つです。

① 新たな借り入れができなくなる

自己破産をすると事故情報として信用情報機関に登録され、ブラックリストに載った状態となります。

信用情報機関とは?
信用情報機関とは、クレジットカードの利用歴や銀行・信用金庫などとの取引歴などが登録されている機関です。

信用情報機関に登録されると、登録期間である約5年間はクレジットカードの利用やローンの申し込みなど、新たな借り入れができなくなってしまいます

大型家具や家電、電化製品など大きな買い物を予定している人は、分割払いや借金をしなくても済むようにまとまった現金を用意する必要があります

② マイホームを手放す必要が出てくる

マイホーム

自己破産ではマイホームも差し押さえの対象となるため、免責後は賃貸物件へ住むことになります

賃貸契約を結ぶ際は、保証会社による入居時の審査があります。

WARNING
保証会社は審査時に信用情報機関を照会するため、自己破産をして事故情報が登録されていると、審査に通りにくい傾向にあります。

したがって、賃貸物件を探す際は、保証会社が不要の物件を探すのがおすすめです。

所得が少ない場合は、一定の条件を満たすことで公営住宅に入居できる場合もあるため、応募してみるのも良いでしょう。

③ スマートフォン等の分割購入ができなくなる

携帯電話・スマートフォンの料金を支払えずに滞納していると、それらも免責の対象となる場合があります。

携帯電話・スマートフォンの料金が免責の対象となった場合は、新たに契約を結び直さなければなりません

WARNING
自己破産をすると新たな借り入れができないため、携帯電話・スマートフォンを分割払いで購入することができません。

型落ちで価格が下がった機種を選んだり、格安メーカーを利用したりと、できるだけ安く入手できるよう工夫してみましょう

免責後にも変わらないこと

投票

免責後に変わらないことは、主に以下の7つです。

自己破産によって、生活のすべてが変わってしまう訳ではありませんので、安心しましょう。

給料

原則的に、今まで通り受け取ることができます。

年金

今まで通り受給できます。まだ受給していない年齢の場合でも、将来の受給額が減らされる心配は基本的にありません

自営業

今まで通り続けることができます。

WARNING
ただし、事業用の設備が差し押さえの対象になった場合は、処分する必要があります。

生活保護

今まで通り受給できます。ただし、生活保護費を借金の返済に充てることは認められません。

養育費

養育費を受け取っている場合は、今まで通り受け取ることができます。支払う立場の場合も免責対象外となるため、引き続き支払い続ける必要があります

選挙権

自己破産の免責後も、選挙権には影響はありません。

税金・罰金

免責によって借金の返済は免除されますが、税金や罰金は免責の対象外です。自己破産によって一定額の預貯金を没収されてしまっても、支払わなければなりません。

税金や罰金の未払いがあれば、免責が決定する前に支払っておくと少しでも免責後の負担が軽くなるでしょう。

CHECK
免責によって変化するものとこれまで通り変わらないものを、しっかり理解しておくことが大切です。
関連記事

自己破産で免責されてから活までの期間は?

スケジュール

自己破産で免責されると、信用情報機関に事故情報が登録されます

その結果、クレジットカードの利用やローンの申し込みなどに支障が出ることがあるでしょう。とは言え、いつまでも生活への影響が続く訳ではありません。

信用情報機関には以下の3つがあり、利用する債務整理の方法によって登録期間が異なります

信用情報機関 主な登録内容 登録期間
CIC(株式会社シー・アイ・シー) クレジットカードの利用歴など 5
JICC(日本信用情報機関) 消費者金融との取引履歴など 5
KSC(全国銀行個人信用情報センター) 銀行や信用金庫との取引履歴など 10

一般的には、上記の登録期間を過ぎると事故情報が削除されるため、再びクレジットカードの利用や借入の申し込みができるようになります。

自己破産の免責が可されない8つのケース

ギャンブル

上述したように、自己破産の手続きでは借金をゼロにすることができますが、場合によっては自己破産の申し立てを行っても、免責が許可されないケースもあります。

免責が認められない原因を「免責不許可事由」と言います。

WARNING
免責不許可事由に該当すると免責が認められず、自己破産に失敗してしまう可能性があります。

免責不許可事由は破産法第252条にて定められており、よくあるケースには以下のようなものがあります。
※参考 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075

 

ケース1

ギャンブルや浪費が原因で借金をした

ギャンブルや投資、浪費などが原因で借金を作った場合は、免責不許可事由に該当し、免責が認められない可能性があります。

例えば
  • 競馬
  • パチンコ
  • FX取引
  • 株式投資

 

ケース2

自己破産することを見越して借金をした

自己破産することを見越して借金をした場合は詐欺行為と判断され、免責不許可事由に該当する可能性があります。

CHECK
自己破産を想定した借金はしないようにしましょう。

 

ケース3

保有する財産を隠ぺいした

自己破産の手続きでは、不動産や預貯金、貴金属など一定以上の価値のある財産を手放す必要があります。

財産を失うことを逃れたい一心で財産を隠したり壊したりすれば、免責不許可事由に該当する可能性が高いでしょう。

 

ケース4

一部の債権者だけに優先して借金を返済した

自己破産をする際には、複数の債権者から借金をしていた場合にもすべての債権者を平等に扱います

「保証人に迷惑をかけたくない」という思いから、お金を渡してしまう人もいるでしょう。

お世話になったからと言って、保証人・連帯保証人など特定の債権者だけに優先して、借金を返済することは認められません

どうしても保証人・連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、自分自身で返済を続けられる任意整理などを検討するのが望ましいでしょう。

CHECK
どうしても保証人・連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、自分自身で返済を続けられる任意整理などを検討するのが望ましいでしょう。

 

ケース5

クレジットカードで購入したものを現金化した

自己破産の申し立てを行う前に、クレジットカードで購入した商品を現金化することは、免責不許可事由に該当する可能性があります。

クレジットカードで買い物をすると、商品の代金を支払い終えるまではクレジットカード会社が商品の所有権を持っています

したがって完済前に商品を転売することは、横領罪に該当する恐れがあります。
※参考 https://saimuseiri.kabarai-sp.jp/creditcard-genkinka.html

注意
クレジットカードの現金化は、犯罪行為です。利用しないようにしましょう。

 

ケース6

裁判所に虚偽の申告をした

自己破産の手続きでは、債務者の借金状況や収入、保有する財産などについて裁判所が調査を行います。

裁判への提出書類も多く、時には裁判官や債務者の財産を管理する破産管財人と、面談をする機会もあります

面談では、裁判官から債務整理に至るまでの経緯や今後の生活改善について質問されます。

万が一、虚偽の申告をしたり非協力的な態度を取ったりした場合には、免責不許可事由に該当すると判断される可能性があります。

 

ケース7

自己破産後1年以内に詐欺まがいの借入を行った

自己破産をすると信用情報機関に登録されるため、一定期間は新たな借り入れができなくなります。

そこで、借り入れをするために詐欺まがいの行為を行った場合も、免責不許可事由に該当する可能性が高いです。

注意
お金を借りるために、身分・収入額・延滞履歴などを偽ることはNGです。

 

ケース8

過去7年以内に自己破産をしたことがある

破産法第252条では、自己破産をしてから7年間は再度自己破産をすることができないと定められています。※4

したがって、過去7年以内に自己破産をしたことがあれば、免責不許可事由に該当するため、原則的に免責を認めてもらうことはできません。

※4参考  https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075

WARNING
他にも、債権者の財産を不当に減少させる、虚偽の書類の偽造・提出、管財業務の妨害、破産法上の違法行為により、自己破産の免責が不許可となる場合があります。

実際に免責が不許可されるケースは少ない?

書類

日弁連が行った破産事件及び個人再生事件記録調査によると、免責が不許可されたケースは極めて少ないことが分かります。

したがって、不正行為を行うことなく誠意をもって正しく手続きを進めれば、一般的には自己破産に失敗する心配はほとんどない、と考えられるでしょう。

CHECK
失敗のリスクを少しでも減らすために、自己破産の手続きは弁護士に依頼するのがおすすめです。

自己破産の免責がおりなかったら?許可の際の対処法

法律

免責不許可の確率は低いものの、場合によっては免責が認められないケースもあります。

免責が許可されなかった場合は、基本的には債務者は借金を返済しなければなりません。しかし場合によっては、借金を返済する前に異議の申し立てを行う手段もあります

CHECK
破産法第252条には、免責許可されなかった場合、即時抗告によって異議の申し立てができると定められています。
民事訴訟法により、即時抗告は免責不許可が決定してから1週間以内に行わなければなりません。
即時抗告とは?
即時抗告とは、裁判所の決定に対して異議を唱える手続きを指します。

免責不許可が決定したら、即時抗告をすべきかどうかを早急に検討し、判断する必要があります。

自己破産の手続きは地方裁判所で行いますが、即時抗告は地方裁判所よりも上級にあたる高等裁判所にて申し出を行います

CHECK
明確な免責不許可事由でなければ、異議が認められ地方裁判所の判断が覆る可能性もあります。

 

即時抗告をしても結果が変わるとは限りませんが、判定に納得ができない場合は申し立てを検討してみるのも、ひとつの手です。

自己破産をするなら護士への相談がおすすめ

弁護士

借金の返済ができなくなり自己破産を決意したら、弁護士へ相談してサポートをしてもらうのがおすすめです。

自分一人で手続きを進めることも可能ですが、自己破産の手続きには複雑な書類の作成や準備、弁護士や破産管財人との面談など、初心者には難易度の高い作業が多いのが難点でしょう。

せっかく自力で手続きを進めても、書類に不備があったり面談で書類と矛盾する内容を話してしまったりすると、免責を許可してもらえず、自己破産が失敗してしまう可能性もあります

注意
自己破産の成功率は高いですが、必ず免責許可をしてもらえるとは言い切れません。

弁護士に依頼すれば、書類の作成や裁判所とのやり取りを代行してもらうことができます

また、万が一免責不許可の判決が下りた時にも、迅速に的確なアドバイスをもらえるでしょう。少しでも成功率を高めるためにも、ぜひ弁護士への相談してみることがおすすめです。

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まとめ

今回は自己破産の免責について、免責不許可の確率や免責後の生活の変化、免責不許可になる8つのケースなど幅広く解説しました。

自己破産は成功率の高い手続きで免責不許可になることは稀ですが、免責不許可事由に該当すると免責を認めてもらえない可能性もあります。

免責不許可になると即時抗告によって異議を申し立てることも可能なため、万が一免責が許可されなかった場合には、即時抗告をすべきかどうか迅速な判断が必要となります。

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