
借金を返済できる見通しがたたない方が行う最後の手段が「自己破産」です。自己破産することで、今ある借金の返済義務がなくなります。
この記事では、自己破産の費用相場や金額を紹介。手続きの流れや必要なもの、その後の生活など、気になるポイントを詳しく解説しています。
もくじ
自己破産申請手続きの流れとは?
「借金がどうしようも返済できないので自己破産しよう」と思い立ってもすぐには出来ません。数カ月間の期間がどうしてもかかってしまうのが自己破産の注意すべき点なのです。
自己破産は、あらゆる書類を集め・裁判所へ提出する労力が非常にかかる作業です。「誰でも出来ます。」と言いたいところですが、その流れが難しいのが問題です。
自己破産には少額管財と同時廃止の2パターンがあります。少額管財・同時廃止どちらに該当するかで、自己破産にかかる時間や流れは異なります。以下、種類別に自己破産の流れを確認しましょう。
【少額管財】の場合
少額管財とは、簡単に言うと少額の資産がある方が当てはまるケースです。もしくは、何らかの免責不許可理由がある場合です。
・33万円以上の現金または20万円以上の価値のある資産がある場合
・免責不許可になる場合
少額管財の場合、手続きが完了するまで半年程度かかります。少額管財の場合、以下が一連の流れとなります。
少額管財の流れ
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- 利息制限法の法定金利へ引き直し計算
- 申し立て書類の準備
- 申し立て・即日面接
裁判所で受付をし、その場で裁判官と面接する - 破産手続き開始決定
面接日翌週水曜日17:00に「破産手続開始決定」が裁判所より出される - 管財人面接
借金の内容、時期/理由/支出/免責の問題点など質問される内容を答える。質問内容に素直に答えていれば問題なく通常30分程度で終了。 - 債権者集会
申し立てをしてから3~4カ月たった後に裁判所に集まる。破産申し立て者へ対して免責許可して問題ないか話す。問題なければ5分程度で終了。 - 免責許可決定
債権者集会から1週間ほど後に決定される。 - 免責許可決定確定
免責許可決定したら完了ではない。1カ月後に法的に確定されることで自己破産は完了する。
【同時廃止】の場合
同時廃止とは、自己破産申請者に高価な資金がない場合に当てはまるケースです。
・33万円以上の現金または20万円以上の価値のある資産がない場合
・免責について「破産管財人が資金面の調査をする必要がない」場合
同時廃止は少額管財に比べて短期間で手続きが終わるのが特徴です。同時廃止は申し立てから3~4カ月程度で自己破産手続きが完了します。同時廃止の流れは以下の通りです。
同時廃止の流れ
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- 利息制限法の法定金利へ引き直し計算
- 申し立て書類の準備
- 申し立て・即日面接
裁判所で受付をし、その場で裁判官と面接する - 破産手続き開始決定
面接日翌週水曜日17:00に「破産手続開始決定」が裁判所より出される - 免責審尋
裁判官との面接を行う必要がある。弁護士とor1人で一度裁判所へ行く - 免責許可決定
債権者集会から1週間ほど後に決定される。 - 免責許可決定確定
免責許可決定したら完了ではない。1カ月後に法的に確定されることで自己破産は完了する。
自己破産申請手続きに必要な費用とは?金額相場を紹介
自己破産手続きは一人でもできます。しかし、煩雑な書類を集めて提出する必要があるため専門家に相談することが一般的です。
そこで、自己破産申請手続きに必要な費用・金額相場を解説します。弁護士に支払う資金がない場合の対処法もまとめていますので、ぜひ確認してみて下さい。
自己破産手続きにいくら必要なの?
自己破産はこれまで何十万、何千万とあった借金を0にする手続きです。しかし、無料では行えません。また自分で書類を集めて裁判所に提出したとしても費用は途中で発生します。
このように、ある程度の費用は自己破産の代償として必要となるのです。では、に実際何にどれだけかかるのか内訳をご紹介いたします。
裁判所に払う費用
裁判所に支払う費用は約1万5千円〜50万円程度です。自己破産で裁判所に払う費用は「申し立て手数料」「予納郵便券代」「予納金」の3つです。
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- 申立手数料(約1500円)
裁判所に申し立てするのに必要な費用です。 - 予納郵券代(約3000円~15000円)
借金をしていた相手金融会社へ「自己破産します!」と通知を送る為の費用です。破産の許可、否認にかかわらず必要な作業過程です - 予納金(約1万円~50万円)
裁判所へ支払う費用はほとんどがこれに当たります。自己破産のための様々な費用がこの予納金でまかなわれます。
- 申立手数料(約1500円)
裁判所に支払う費用は「同時廃止」か「少額管財」で大きく異なります。
同時廃止の場合は予納金の相場は1~3万円程度です。財産の差し押さえや調査をする必要がないためです。同時廃止の方が費用・期間ともに負担が少なくすみますね。
一方、少額管財の場合は予納金の相場は20万円程度です。この2つに関しては、弁護士と相談して自分がどちらの対象になるのか判断した上で申し立てをする方が何か心強いですね。
弁護士に払う費用
弁護士に支払う費用は約25万円~50万円が相場と言われています。この内訳は以下2つです。
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- 着手金(約20万円~30万円)
弁護士に「自己破産するのを手伝ってください。」と依頼した段階で発生するお金です。途中で解約しても返金はされません。 - 成功報酬(約0円~20万円)
自己破産を申し立てて、裁判所から「借金支払い義務を無くします」と判断されると発生します。事務所によってはこの費用が不要なところもあります。しかし、その分着手金が割高なこともあるので事務所選択は重要です。
- 着手金(約20万円~30万円)
弁護士事務所によって費用の内訳は異なります。弁護士事務所に相談する際は、必ず費用の内訳を確認。着手金と成功報酬にそれぞれいくらかかるのか調べておきましょう。
自己破産を弁護士に相談するお金が無い人は?
自己破産を選択する段階で全く余裕がないこともあるでしょう。その場合は4つの選択肢があります。以下、参考にして下さい。
fa-check最寄りの法テラスを利用する
法テラスを利用すれば弁護士費用の立て替えをしてくれます。
後にご自身で支払う必要はあるのですが、無料で3回法律相談ができます。デメリットは、弁護士を選択する自由がないということです。
fa-check弁護士費用を分割払いする
自己破産を扱う弁護士事務所であれば、分割払いの相談に乗ってくれます。まとまった資金を用意できそうにない時は、分割払いを持ちかけてみましょう。
分割払いに対応している弁護士事務所は複数あります。いくつかの事務所を比較したうえで、自分に合いそうな事務所を選びましょう。
fa-check司法書士を利用する
司法書士とは、弁護士より扱える業務範囲が狭まい法律の専門家です。範囲が狭いとはいえ、自己破産に関しては一部業務を除き対象の範囲となります。
司法書士の場合、弁護士に相談するより費用が安くすむメリットがあります。弁護士費用がどうしても用意できない方は、司法書士も選択肢に入れてみて下さい。
fa-check1人で自己破産する
弁護士や司法書士に依頼しなければ自己破産費用はぐっと抑えられます。しかし、個人での自己破産申し立てにはリスクが生じます。
・膨大な時間がかかる
・書類の準備が煩雑
・疑問や不安を相談できない
・自己破産に応じてもらえない可能性
自己破産は個人でもできますが、手続きの煩雑さから専門家に相談するのがベターです。中には着手金0円の弁護士事務所もありますので、まずは低コストで依頼できる専門家を探しましょう。
自己破産申請手続きに必要な書類(モノ)とは?
自分一人で手続きするにしろ専門家に相談するにしろ自己破産では書類を集める必要があります。書類は1枚2枚程度で終わるのではなく何種類もの書類が必要です。ここでは、自己破産で必要となる書類をまとめて紹介します。
自己破産で絶対必要なものは?
まず、自己破産で絶対に必要なものは以下の通りです。
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- 申立書/陳述書/債権者一覧/財産目録(裁判所にて入手)
- 住民票
- 申立日前1ヵ月間の家計簿等(自分で作成)
- 給与明細(2~3カ月分必要)
- 源泉徴収票(勤務先に貰う)
- 預金通帳の写し
ご自身で気軽に集めることが出来るものだけではないのが注意点です。また、裁判所にて入手する必要がある書類については専門家に相談する方が無難です。
状況によって必要なものは?
次に、状況に応じて提出する必要があるものをご紹介します。
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- 車検証・自動車税の申告書等車の名義の証明書類
- 土地家屋の権利書
- 保険証書など保険契約を証する書類
- 退職金見込額証明書
- 株・FXなどの取引明細
これらは、余裕資金が無いことを証明するために必要な書類です。自己破産の免責を許可する判断材料として、提出を求められた際は躊躇なく提出しましょう。前もって手元に準備しておくとやりとりはスムーズです。
自己破産申請手続き期間中の収入はどうなる?
自己破産というと「収入は全て没収されてしまうのか…」と認識している方も多いでしょう。しかし、全額を没収されるわけではありません。自己破産で受け取れる収入は以下3つのパターンで異なります。
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- 自己破産前にすでに貰っている収入
→処分の対象ではありません。しかし、現金預金口座にあれば没収対象です。 - 自己破産手続き開始段階でまだ貰ってない収入
→手取り額の1/4が財産処分の対象です - 自己破産手続き後に貰う収入
→全て処分対象外です。
- 自己破産前にすでに貰っている収入
自己破産で収入が没収されるのは、基本的に自己破産手続き前に限られます。自己破産手続き終了後は、収入が没収されることはありません。
自己破産手続きが終了すれば、全ての収入が自分の手元に入ります。借金返済義務もなくなっているため、手続き後は安心してお金を稼げるでしょう。
自己破産申請手続きのその後とは?
自己破産の申し立てをし「免責許可が降りたら終わり」ではありません。ここからが本当のスタートです。自己破産申請手続き後は、いくつか制限がかかります。
ここでは、手続き後の生活で制限される事を紹介します。どうなるか不安という方はぜひ一読してみて下さい。また、手続き期間中に制限されることも解説しています。
fa-pencilクレジットカードが利用出来ない/ローンが組めなくなる
自己破産の申し立てを行うと、当然利用していた金融機関へ連絡がいきます。自己破産=返済する資金能力がないものとして登録され、強制解約となります。
事故情報が登録されている期間は、カードを作成したりローンを組んだりできません。そのため再度カードを作成できるのは5年後となるのです。
fa-pencil免責まで特定の職業には就けない
破産開始~免責決定までは特定の職業で働くことは出来ません。下記、破産手続き中に制限がかかる職業の一例です。
・建築に関する職業(建築士など)
・代理人/警備員/保険外交員/遺言執行者など資格を必要とする仕事
免責が決定されたら再度働き出すことは可能なため、制限期間は3カ月程度です。該当しない職業であれば、手続き中も問題なく働けます。
fa-pencil引っ越し
自己破産手続き中は、自由に引っ越しが出来ません。引っ越しする場合は事前に裁判所に許可を貰う必要があります。しかし実際には、申請だけしておけば裁判所も許可してくれるケースがほとんどです。
自己破産申請手続きの相談!弁護士or司法書士どっち?
結論から述べると自己破産手続きは自分一人でもできます。しかし、後々手続き中に貸金業者とトラブルになるリスクもあるので出来れば専門家に相談する方がおすすめです。
自己破産の専門家には「弁護士」と「司法書士」がいます。では弁護士と司法書士のどちらに相談するのがいいのかこちらでご説明していきます。
そもそも弁護士と司法書士とは?
同じ士業である2つの職業が、何が違うのか普段生活していれば気にすることもないでしょう。しかし、弁護士と司法書士には大きな違いがあるのです。以下、各特徴をまとめています。
弁護士 | 身の回りに起きる全てのトラブルを法律に沿って解決します。相談者の代理人となって加害者と交渉を行うこともあります。 |
司法書士 | 司法書士は不動産・会社等の開設に当たっての登記を行うことがメインです。制限された範囲内において法律相談に乗ることはできますが、代理人にはなれません。 |
自己破産手続きは弁護士がおすすめ
結論から言うと、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士では、自己破産の申し立て~破産手続き完了まで全てをサポートしてくれます。
弁護士は、法律関係の業務全般を扱えます。司法書士と異なり手厚いサポートが可能です。また、弁護士に相談する方がスピーディーに自己破産手続きが完了する傾向にあります。
もし自己破産手続きを迷っている方がいたら、一度弁護士に相談してみてても良いでしょう。無料で相談できる事務所ならお金はかかりません。
まとめ
自己破産とは日常生活の中で経験することがほとんどないものです。そのため、そのフローはまだまだ認知されていません。
もし、自己破産という選択肢が見えてきたらまず専門家の元へ相談に行きましょう。話を聞いてもらい適切な手続きを踏むことが問題解決への一番の近道です。