
自己破産という言葉を聞くと「何もかも終わりで、お金も信用も全てを失う」というイメージが先行する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、実際のところ自己破産をすることによって全てを失うわけではありません。自己破産を正しく理解すれば、メリット・デメリットを知った上で制度を有効活用できる可能性があります。
そこで今回の記事では、自己破産とは何かという基礎知識から、メリット・デメリットに至るまでを解説しています。
さらに、気になる費用やタイミング、手続き方法なども紹介。自己破産について正しい知識を得られる内容です。借金をしていて将来どうなるのか不安な方は、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
自己破産とは?
自己破産は、借金を帳消しにするために法律で定められている救済措置のことです。自己破産は「破産法」と言う法律で定められているプロセスです。
詳しくは後述しますが、自己破産で全ての資産は没収されません。
自己破産は借金をリセットできるというとてつもないメリットがある一方で、デメリットもあります。
例えば、持ち家や車は当然失うことになりますので、同居している家族に迷惑がかかります。家族がいる方は自己破産を検討するのに慎重になるべきでしょう。
債務整理と呼ばれる手法の中でも自己破産はいわば最終手段。デメリットについても考慮して、よく考えた上で自己破産するかどうかを判断した方が良いでしょう。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産には、メリットとデメリットの両方があります。手続きを検討するのであれば、メリット・デメリットどちらも知っておくことが大切です。ここでは、メリットとデメリットについてまとめています。
自己破産のメリット
まずは自己破産のメリットをご紹介します。主なメリットは次の5つです。
fa-asl-interpreting借金が全てリセットされる
自己破産の最大のメリットは借金がリセットされることです。文字通り、借金がなくなります。いくら借金の額が大きくとも0円となります。
他にも債務整理の方法はありますが、借金を全てリセットできる手法は自己破産のみです。
後述するデメリットのことも考慮に入れてみても、メリットの方が大きい場合は、制度を活用して借金を全てなくすのも一つの手でしょう。
fa-minus-circle督促・取り立てがなくなる
詳しくは後述しますが、弁護士が受任通知と呼ばれるものを債権者である金融機関に送ります。
金融機関は受任通知を受け取り次第、もう督促や取り立てを行うことができなくなります。今まで取り立ての電話などに悩まされてきた方にとってはとても大きな魅力です。
fa-database生活に必要なものは残せる
破産申請しても全ての財産は取り上げられません。最低限生活していくことができるだけの必要最低限以上の財産は、残すことができます。
家族や実家のご両親が借金を肩代わりする必要はないので、一度自己破産してリセットするという判断もありうるでしょう。
fa-line-chart破産後の財産は自分のもの
自己破産は一度借金をリセットする制度です。破産後には、再び貯金をしていくこともできます。お金を稼ぐことも自由です。破産が認可されれば仕事も自由に選べます。
fa-pencil将来の見通しが立てられるようになる
借金がリセットされることで、将来の見通しが立てられるようになることもメリットです。借金に追われて冷静に金額の計算ができなかったのも、自己破産で借金がリセットされると冷静に考えられるでしょう。
家族のことや将来のことを余裕を持って考えられるようになることで、より計画的に人生を歩んでいける一歩を踏み出せます。
自己破産のデメリット
次に自己破産のデメリットをご紹介します。自己破産のデメリットは主に5つあります。
fa-times-rectangle-o資産を失う
自己破産をすると、高額な資産を失うことになります。生活していくために最低限の資産は残すことができますが、せっかくの思いで購入したマイホームや車などは取り上げられます。
マイホームや車などの財産を取り上げられてしまうことで、家族への影響は避けられません。自己破産を行う場合には慎重に自己破産をした後のことを考えてからの方が良いでしょう。
fa-window-close-o保証人に支払い義務が生じる
自己破産をすると、保証人・連帯保証人に支払い義務が生じます。したがって、自己破産をすると保証人・連帯保証人に必然的に迷惑がかかります。
自己破産をするのであれば、保証人・連帯保証人の方に相談した後にすべきでしょう。相談せずに勝手に自己破産すれば、当然保証人・連帯保証人の方とのトラブルの原因になります。
fa-window-close-o金融事故情報が5〜10年残る
債務整理は金融事故扱いとなります。金融事故情報が残っている期間中は、クレジットカードとローンの利用ができません。期間は5〜10年程度です。
fa-window-close-o官報に掲載される
官報という国が発行する資料に名前が掲載されることになります。一般の人が官報を見る可能性は低いものの、もし見られてしまった場合に自己破産したことがバレてしまいます。
fa-window-close-o自己破産手続き期間には就けない仕事がある
自己破産手続き期間中には特定の仕事には就けません。該当する仕事には以下のような仕事があります。
- 弁護士・税理士・司法書士・行政書士などの士業
- 公務員の委員・委員長
- 会社の取締役、執行役員、監査役など
- その他一部の仕事
医師、看護師、介護士などの仕事は影響を受けません。その他一部の仕事のうちには、貸金業務を行う仕事や、生命保険募集人、警備員、風俗業管理者などの仕事があります。
自己破産以外で借金を解決する方法はある?
自己破産以外にも債務整理する手段は2つあります。そのいずれかを使って済むのであればそちらの手法を使った方が良いでしょう。自己破産は債務整理の中でもいわば「最後の手段」であり、デメリットも非常に大きいためです。
自己破産以外の債務整理の方法である「任意整理」と「個人再生」について本章では解説します。
任意整理
任意整理とは、金融機関と交渉して借金のうちの利息部分を減らすための手続きです。
任意整理をするための条件は以下の3つです。
-
- 安定した収入がある
- 3〜5年で返済できる
- 途中で返済継続を放り投げない
任意整理のメリット・デメリットを以下でご紹介しますが、任意整理で済むのであれば任意整理で済ませてしまった方が良いでしょう。任意整理は債務整理の中でも一番軽い整理手法なので、デメリットが非常に少ないです。
任意整理のメリット
任意整理のメリットには以下のものがあります。
- 返済しなければいけない金額から利息部分をカットできる
- 過払金についてはカットできる可能性がある
- 催促・取り立てがなくなる
自己破産を検討されている方であっても、任意整理という手法だけで解決できる場合があります。
後述しますが、自己破産に比べてデメリットが非常に少ない手法なので、上記の利息部分カットだけで返済の見通しが立つのであれば任意整理で済ませるのがおすすめです。
任意整理のデメリット
任意整理のデメリットは以下です。
- ブラックリストに5年間載る
- 全ての利息をカットできるとは限らない
任意整理のデメリットは上記2つのみで、自己破産のように財産を没収されません。苦労して買ったマイホームや家、他の財産などの全てを残すことができます。
また、自己破産のように保証人・連帯保証人に迷惑がかかりません。任意整理のデメリットの少なさを考えれば、まだ債務額が少ない人は任意整理で済ませた方が良いでしょう。
個人再生
個人再生は、借金の利息分だけではなく元本も5分の1〜10分の1まで減らすことができる債務整理手法です。
債務整理手法としては、債務の減少幅が任意整理よりも大きくデメリットは自己破産よりも少ないため、任意整理と自己破産の中間に位置付けられます。
個人再生を利用するための条件は「個人事業主・事業経営者」と「給与所得者」で異なっていますが、大枠で共通している条件は以下の通りです。
-
- 安定した収入がある
- 借金総額が5,000万円以下(住宅ローン除く)
- 減額された借金を3〜5年で返済できる見込みがある
上記の条件を満たす方で、任意整理では返済できないという方は、個人再生を検討してみましょう。以下で個人再生のメリット・デメリットについてご紹介しますので、そちらも考慮に入れてみてください。
個人再生のメリット
個人再生のメリットは以下の通りです。
- 利息分だけでなく、元本についても5分の1〜10分の1まで減らせる
- マイホームや車を残せる
- 借金をした理由については不問
- 職業制限がない
個人再生のメリットで一番大きいのは元本を減らせることですが、マイホームや車を残せるというメリットもとても大きなものです。
特に家族がいる方にとってはマイホームを手放すという決断はよほどのことでない限りできないですから、個人再生のメリットはとても大きいと言えます。
個人再生のデメリット
個人再生のデメリットは以下です。
- 手続きが複雑で時間がかかる
- ブラックリストに5〜10年間載る
- 官報に掲載される
返済を継続しなければならないという縛りがあるものの、マイホームや財産を残すことができる可能性があるため、個人再生で済むなら済ませた方が良いです。
ただし個人再生は債務整理手法の中で一番手続きが複雑で時間がかかるため、利用するのが難しい点が大きなデメリットです。
自己破産を検討すべき時期・タイミングとは?
自己破産を検討すべき時期・タイミングは以下3つのタイミングです。
-
- 借金がかさみ返済の目処が立たなくなった時
- 督促のため普通の生活が送れなくなってしまった時
- 病気や怪我などで長期的に働けなくなってしまった時
1. 借金がかさみ返済の目処が立たなくなった時
借金を放置したままでいると、遅延損害金の金額もどんどん膨らんでいき返済の目処が立たなくなってしまいます。放っておくと、自己破産するよりももっと悪い結果をもたらします。
具体的には財産の差し押さえに合う上、裁判で敗訴して借金を支払い続けなければならなくなります。「もうどうしようもない」と思ったタイミングで、自己破産を検討する方が今後のためです。
2. 督促のため普通の生活が送れなくなってしまった時
長い間数多くの借金の返済を放置していると、債権者である金融機関からの督促や取り立てで毎日怯えて生活しなければなりません。
毎日のように取り立ての電話がくると精神的にも参ってしまいます。延々と思い悩み続け精神を病んでしまうよりかは、自己破産して一度リセットする方が良いでしょう。
3. 病気や怪我などで長期的に働けなくなってしまった時
ローンや借金を抱えたまま、病気や怪我などで長期的に働くことが難しくなってしまった時は一人で思い悩んでいないで債務整理を検討しましょう。
働けなくなり、財産もなければ、借金はますますかさみ状況は悪くなる一方です。早い段階で自己破産を検討した方が良いでしょう。
自己破産したらどんな影響がある?
自己破産した時の影響をあらためて考えると、以下の3点になります。
-
- 社会的信用を失う
- 家族・連帯保証人に迷惑がかかる
- 特定の職業に就けない
2と3については上述しましたが、やはり「社会的信用を失う」という点についても見逃せません。自己破産が周囲にバレる可能性は低いものの、もし知られた場合、人によってはマイナスイメージを抱く可能性があります。
アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏をはじめ破産経験者の中には、経済的に大成功している方もいらっしゃいます。そのため、自己破産したからといって職業的な成功ができなくなるわけでもありません。
最後の最後まで自己破産という選択肢を避けるよう努力すべきですが、どうしようもない場合には自己破産を選択肢のひとつとして考えてみてください。
自己破産の流れ・費用・期間
ここでは、自己破産の流れ・費用・期間についてそれぞれご説明します。
自己破産の流れ
自己破産の流れは管財事件か同時廃止事件かで異なります。各手続きの流れは以下の通りです。
fa-pencil管財事件の場合
- 弁護士に依頼し、手続きを始める
- 金融機関に受任通知を送り、取り立てをやめてもらう
- 申し立てのために書類などを準備する
- 裁判所での面接を経て自己破産手続き開始
- 管財人面接
- 債権者集会
- 免責許可決定
fa-pencil同時廃止の場合
- 弁護士に依頼し、手続きを始める
- 金融機関に受任通知を送り、取り立てをやめてもらう
- 申し立てのために書類などを準備する
- 裁判所での面接を経て自己破産手続き開始
- 免責審尋
- 免責許可決定
裁判所で手続きを開始するまでは、自己破産手続きの流れは一緒です。管財事件か同時廃止かでプロセスが分かれますが、基本は管財事件しか選択できません。どうしても自己破産の費用が払えない場合にのみ同時廃止が選択できます。
自己破産の費用
自己破産費用の相場は、20万円〜50万円と言われています。自己破産をするのにもある程度の費用が必要なので、少額しか借金をしておらず、また返済の目処も立つ場合は任意整理などの方が結果的に安くなるので良いかもしれません。
自己破産手続きに要する期間
自己破産手続きの流れを全てこなすには半年〜1年以上かかると見積もっておきましょう。特に申し立てのための書類の準備に時間がかかります。書類準備が早く終われば終わるほど、手続きに要する期間は短くなります。
自己破産申請手続きは希望すれば誰でも可能?
自己破産申請手続きは、希望すれば誰でも実施可能というわけではありません。
しかしこの点については相談してみないとどこまで許されるかわからないため、本当に困っている方はまずは弁護士の先生に相談してみた方が良いでしょう。
自己破産申請手続きは弁護士に任せるのが得策!
自己破産申請手続きは、弁護士の先生に任せるのがおすすめです。早い段階で相談すれば、あなたに最適な提案を弁護士の先生がしてくれるでしょう。
借金が支払えないのを先延ばしにすればするほど、状況は悪くなる一方です。お早めに弁護士の先生に相談してみてください。
まとめ
この記事では、自己破産のメリット・デメリットから、方法やタイミングに至るまで紹介してきました。自己破産とは何か、分かって頂けたのではないでしょうか。
自己破産は毎年数万人の人が利用している制度です。他に手段がない場合には自己破産を検討してみても良いでしょう。まずは弁護士の先生に相談することからはじめてみてください。