
個人再生手続きをとると、基本的にクレジットカードは使えなくなります。ただし、例外として使えるクレジットカードはありますし、クレジット以外で似たような使い方ができるものもあります。
この記事では、個人再生後のクレジットカードに関する情報をまとめています。個人再生を考えている方や、実際に手続きをした後、クレジットカードがなくなって困っている方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
個人再生(民事再生)とは
まずは、個人再生(個人民事再生)とは何か?について説明していきます。自己破産と混同されている方が多いので、違いをしっかり押さえましょう。
個人再生は債務整理のひとつ
個人再生は、法律で認められている「債務整理」のひとつです。
債務整理と聞くと真っ先に自己破産を思い浮かべる方が多くいらっしゃいます。実際に弁護士事務所を尋ねる方には「借金が返せないので自己破産をしようと思います」と相談する方も少なくありません。
債務整理には3つの種類がある
ですが借金問題を解決する方法は自己破産だけではありません。債務整理には、次の3つの方法があります。
任意整理 | 裁判所を介さずに債務者(借り手)と債権者(貸し手)の間で直接交渉する方法 |
個人再生(民事個人再生) | 裁判所を介して債務整理する方法 |
自己破産 | 裁判所を介して債務整理する方法 |
借金をゼロにする代わりに20万円以上の価値のある財産の全てを奪っていく自己破産よりも軽めの措置として、個人再生という方法が用意されています。
自己破産は財産を没収する代わりに借金を帳消しにするのに対し、個人再生は財産を残したまま、借金を5分の1程度に圧縮する形となります。
借金の全額は返せないけれど一部なら返せる、というだけの余裕や収入見込みがあれば、自己破産よりも個人再生のほうがダメージは少ないため検討の余地があります。
個人再生のメリット
また個人再生のメリットのひとつに、住宅ローン特例が適用できる点があります。
20万円以上の価値のある財産は基本的にすべて没収となる自己破産とは違い、個人再生は持ち家を残すことができるため、返済能力が残っている方を中心に選ばれることの多い務整理方法です。
個人再生の影響は?クレジットカードは作れない?
個人再生手続きを取ると、クレジットカードが一定期間作れなくなります。また、次のような影響があるので注意が必要です。
- 信用情報に傷がつくため新たな借り入れやキャッシングが当分の間難しくなる
- クレジットカードが作れなくなる
- 新たなローンや割賦契約が組めなくなる
- ローンを組んで購入しまだ返済中のものがある場合、手放す必要が出てくる場合がある
- 保証人つきの借り入れがある場合、保証人に迷惑がかかる
すべて、個人再生に限らず債務整理全般のデメリットとなります。次項で詳しく説明しますが、上記のうち保証人以外の内容に関しては、個人再生手続きをした後永久に続くというものではありません。
個人再生手続きの中で定められた返済計画どおりに返済を完了し、一定の期間が過ぎると、またクレジットカードを作ったりローンを組んだりすることが可能となります。
保証人に関しては、基本的に債務者本人の借り入れのうち返せなかった分がそのままスライドする形となります。
また、そもそも個人再生が認められない場合もあります。定期収入がなく、債務を圧縮したところで返済できないと判断される場合などが該当します。この場合、自己破産を勧められるケースが多いです。
個人再生後、いつから信用情報が回復する?
個人再生手続きをすると、その旨が信用情報に記載されます。その内容が削除されるまでの期間はおおよそ5年となります。
同じ債務整理でも、信用情報が回復されるまでの期間は手続き方法により異なり、任意整理や個人再生の場合は5年、自己破産の場合は10年と言われています。
なお、個人再生の場合は返済計画どおりに返済を進めていることが前提となります。
ただし、これは法律などで厳密に定められたルールではなく、信用情報を管理する機関が持つ独自ルールのため、必ず5年、必ず10年とは言い切れません。信用情報が回復するまではだいたい5〜10年くらい、と考えておくのが良いでしょう。
個人再生後に発行できるクレジットカードはある?
個人再生手続きをした旨が信用情報に載ると、基本的にクレジットカードの申し込みは通りません。ただし、すべてのカードが使えなくなるわけではなく、中には利用可能なものもあります。
自分名義のカード
個人再生手続きをした本人名義のクレジットカードは、基本的に全て使えなくなります。新規申し込みも基本的に通りません。
なお、個人再生から5〜10年経つと信用情報が回復するため、本人名義のクレジットカードが再び作れるようになります。
ただし個人再生手続きにて借り入れ額が圧縮となった業者からは、信用情報回復後でも新しいカード発行を認められないケースがあります。
これは信用情報とは別に、各カード会社で顧客情報を管理しており、そこには期限なく債務整理の記録が残ると考えられるからです。貸したお金を一度でも踏み倒した客には2度とお金を貸さない、ということです。
配偶者名義のカード
配偶者名義のカードは、個人再生の影響を受けません。個人再生はあくまで債務者本人の信用情報に影響を与えるのであって、配偶者の信用情報には影響がないからです。
個人再生手続きを取った後でも、配偶者名義のカードはそれまでと何ら変わらず使うことが可能です。
家族カード
個人再生をした本人名義カードの家族カードは、自分名義のクレジットカードと同じタイミングで使えなくなります。逆に配偶者名義の家族カードは、配偶者名義のカードと同様に個人再生手続き後も問題なく使えます。
個人再生手続きをすることを決めたら、実際に手続きを始める前に配偶者名義のクレジットカードとその家族カードの発行手続きをしておくのがおすすめです。
リボ専用カード
リボ専用カードとは、決済時に一括払いやボーナス払いなどを選択していても請求時にはリボ払いとなるカードです。
カード会社からすると、リボ払いは一括払いなどと比べて手数料収入が見込めるため、キャンペーンなど実施して積極的に発行を後押ししてきました。そんなリボ専用カードですが、基本的に普通のクレジットカードと同じ扱いになります。
持っていたカードの更新手続き
クレジットカードは原則、期限が切れる直前に更新手続きの書類が届きます。ですが個人再生手続きをした場合、更新手続きの書類も届きません。
また、手続きから5〜10年経って信用情報が回復した際に更新の案内がくることも基本的にありません。個人再生手続き後、本人名義のクレジットカードを申し込む場合ははすべて新規発行扱いとなります。
個人再生後でもカードが作れたって本当?使えるカードは?
インターネットを検索してみると「個人再生したけどカードを持てた」「信用情報にキズついてたけどカード発行できた」といった口コミを見かけます。
個人再生手続き後、5年たたずに発行できるカードがあるかどうかを調べてみました。
デビットカードやプリペイドカードは利用可能
普通のクレジットカードは、やはり個人再生手続き後5~10年たって信用情報が回復しないと発行してもらえません。
ですがクレジットカードと近い使い方ができるもので、信用情報のキズの有無にかかわらず誰でも持てるものがあります。それがデビットカードとプリペイドカードです。
fa-credit-card-altデビットカード
デビットカードとは、店頭決済やネット決済で使えるキャッシュカードのようなものです。
お買い物時の使い方としてはクレジットカードと全く同じですが、銀行口座の残高の範囲内でしか使えません。
カード発行側としても、決済金額をすぐに銀行口座から回収可能なことからリスクがないと判断できますので、信用情報の状態に関わらず発行してもらえます。
fa-credit-cardプリペイドカード
プリペイドカードは、テレフォンカードやappleカードなどに代表される前払い式のカードです。
amazonカードや図書カードなどのように決まったお店やサービスでしか使えないものもあれば、クオカードのように様々な店舗で広く使えるものもあります。
カードを購入した時点で利用分の代金は支払い済のため、こちらも信用情報の状態に関わらず利用が可能です。
どちらも、手持ちの現金や口座残高の範囲内でしか使えないため、お金がないときにクレジットカード払いで凌ぐ、という使い方をしていた方にとってデビットカードやプリペイドカードは物足りないかもしれません。
ですが現金を持ち歩かなくてもカードで買い物ができる、という意味ではデビットカードやプリペイドカードはクレジットカードの代替として十分使えるものです。
特にデビットカードは、例外はあるものの携帯電話料金などの定期引き落としにも使えますので、個人整理や自己破産した方の多くはクレジットカード代わりにデビットカードを活用されています。
スマホ決済も活用しよう
カードではないのですが、スマホ決済もクレジットカード代わりの決済方法として活用してほしいもののひとつです。スマホ決済にはチャージ方式のものと、携帯料金とのまとめ払い方式の2種類があります。
fa-databaseチャージ方式
チャージ方式は利用前にあらかじめ銀行口座などからチャージしておくことで、その金額の範囲内で決済が可能です。
チャージ形式の場合はプリペイドカードと同様に前払いの形となるため、信用情報の状況に関わらずチャージした金額の範囲内で利用が可能です。
fa-mobile-phone携帯料金とのまとめ払い方式
携帯料金とのまとめ払い方式では、その月の利用分が携帯料金請求時に合算されて請求されます。携帯料金とのまとめ払いの場合は後払いとはなりますが、大きな金額でなければ審査などないためほぼ利用可能です。
ネット決済の場合はまだスマホ決済に対応していないところもそれなりにありますが、店頭決済ではクレジットカード決済と同じかそれ以上にスマホ決済は普及しています。
最近ではスマホ決済を利用すると大々的にキャッシュバックやポイント還元をしてくれるところもあります。クレジットカードの代わりになる決済方法として、どれか1つでも準備しておくことをおすすめします。
個人再生後にお金に困った時の対処法
個人再生手続きをすると、クレジットカードは作れなくなりキャッシングや新たな借り入れもできなくなります。
デビットカードやスマホ決済も、銀行口座に残高がないと利用できなかったりします。そんな中で「どうしてもお金が足りない」ときにとるべき方法を紹介していきます。
身内を頼る
1番手取り早いのは、この方法でしょう。個人再生手続きをしたことを理解してくれている人を頼り、一時的に助けてもらうパターンです。
贈与税にかかるほどの大きな金額でなければ、両者が合意している限り特に問題はないでしょう。ただし、一時的なケースならば良いですが、
恒常的に金銭的援助を受けるようなケースはしっかりした話し合いの上で行うことをおすすめします。毎月のようにお金が足りなくなる、というのはそもそもの返済計画に無理があるのかもしれません。
その場合は身内を頼ってもその場しのぎにしかならず、下手をすれば身内間でのいざこざの原因になります。
弁護士に相談する
頼れる人がいない場合、まずは個人再生手続きの際にお世話になった弁護士に相談しましょう。
手続きの際の弁護士費用を分割で払い続けている場合なら支払い調整の相談に乗ってくれるでしょうし、それ以外の場合でも支援や補助など、何かしら使える制度を一緒に探してくれるでしょう。
間違っても、個人再生手続きにより決まった返済分を自身の判断で滞納するのはやめましょう。本人の再出発のためにまとまった再生計画が実行されないことにより、不利な立場に置かれる可能性が出てきてしまいます。
返済間に合わないかも、お金足りないかも、と気づいた時点ですぐ、弁護士に相談するようにしてください。
まとめ
一度でも債務整理をすると、クレジットカードを作るのは当分の間難しくなります。しかし「クレジットカードが作れない」「ローンが組めない」という日々も5年・10年たてば終わります。
また、デビットカードなどは問題なく使用可能です。個人再生手続きによりカードが使えなくなることで、かえってスッキリするケースもあるでしょう。
これから個人再生手続きに踏み出そうとしている方も「もう人生終わりだ」と諦めることなく、まずは生活の立て直しからスタートしてみてくださいね。