
「自己破産」と聞くと、とてつもなく大変なことをイメージされるかもしれません。自己破産にはメリット・デメリットともにあり、一概に良い・悪いとは言えません。
本当は借金などしない方がいいですが、「突然働けなくなった…。」「離婚した妻へ支払う慰謝料の金額が高額で現状支払えない。」など、いつ多額の資金が必要になってくるかは分からないのが生活です。
この記事では、そんな抱えきれなくなった債務を処理する自己破産するとどうなるのか解説します。その後の生活やデメリットなど詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
自己破産とは?
「自己破産」とは、自身が抱えた負債(借金)を支払うことが不可能となったとき、裁判所に申し立て支払い義務を免除して貰うこと(実質借金を0にして貰うこと)です。
借金をする段階では長い目で返済出来る見通しがあっても、思いがけない出来ことに遭遇してしまうケースは少なくありません。
-
- 会社が倒産して借金を支払うことができない
- 車での事故に借金が重なってしまって見通しが立たない
- どうしても働けなくなってしまった
端的に言えば、自己破産すると借金がゼロになります。もし1億円の借金があっても、自己破産後は0円です。
自己破産するとその後の生活・収入・仕事はどうなるの?
実際に自己破産すると、その後の収入、人生、生活についてどうなるのかが気になる点です。
自己破産後の生活でも可能なこと
具体的に通常通りの生活が出来るというのは大きく2つの理由があるからです。
fa-check資産は貯めることが出来る
自己破産手続き後に借金の返済義務がなくなっているので、それ以降に新たな金融資産を手にしても全て自分の手元に残ります。
これまで以上に稼ぎ、よりよい生活にしたいのであればダブルワークで給料をいくら稼いでいたとしても、全て貯蓄に当てることが出来ます。
fa-check仕事は普通に出来る
自己破産手続き中でも、自己破産後でも仕事自体はこれまで通り出来るのです。むしろ債権者(借金取り)からの取り立てがなくなるのでこれまでより働きやすくなる可能性があります。
自己破産後の生活で出来なくなること
前述では自己破産後でもこれまでとほぼ変わらない生活を送ることが可能と解説しましたが、一定のことは困難となります。大きく分けて下記の3つです。
fa-exclamation-circleローンが組めなくなる
ブラックリストに登録されるので、「住宅ローン」「車のローン」と言った支払い全般のローンを組むことが出来なくなります。
こんな状況の時に違法であるヤミ金業者などから「お金を借りないか?」という営業の電話がかかってくることがありますが、絶対に止めておくべきなので無視しておきましょう。
fa-exclamation-circleクレジットカードの利用が出来ない。
自己破産後は、一定期間カードの利用及び新規作成が出来なくなります。信用情報機関に自己破産の記録が残されてしまうため、クレジットカードもカードローンと同様に5年〜10年程度作れなくなります。
ポイント還元もあり、日常生活に欠かせない存在となっているクレジットカード。キャッシュレス 化が加速する現代において、カードが使えないことは大きなデメリットと言えるでしょう。
fa-exclamation-circle金融商品を購入しづらくなる
株や投資信託、国債など将来の資産を先々考えて購入したいと思っても、審査に通りずらくなります。
金融商品の購入では、審査が行われるケースがほとんどです。金融機関は審査に際して、信用情報をチェックしています。自己破産の履歴があると、契約できない商品も少なくありません。
自己破産方法を解説!流れ・注意点なども紹介
どうしても自己破産するしか方法がないと言う場合は、まず弁護士に依頼することからスタートします。下記、具体的な流れを詳しく紹介していきます。
1、弁護士に依頼する
まずは、法律のプロである「弁護士」や「司法書士」に相談することから始まります。どこの弁護士事務所でも良いと言うわけではなく、債務整理に強い弁護士事務所に頼りましょう。
医者が内科医・外科医と別れているように弁護士も得意・不得意分野があるものです。また、契約までの間に「費用がどれくらいなのか」「分割払いも応じてくれるのか」ということを確認しておくのも非常に重要です。
条件が合う弁護士事務所と契約する必要があるため1~2週間程度時間がかかります。
2、債権者(借金取り)に自己破綻するすることを知らせて貰う
弁護士に依頼したら即日、債権者に対して取り立てをストップする効力のある受任通知を送ってもらえます。この段階で精神的に非常に楽になるはずです。
3、自己破産申請に必要な書類の準備をする
自己破産が決まったら、裁判所に申請手続きします。実は、自己破産を裁判所に申請するのが一番大変な作業です。大量の書類を準備しなくてはなりません。
しかし、弁護士に任せておけば何がいつまでに必要なのかサポートしてくれます。書類の準備で不明なことがあれば、弁護士に相談しましょう。
4、裁判所で自己破産に至った経緯を説明する
書類を提出すると「裁判官」「弁護士」「当事者」の3名でなぜ自己破産に至ったのか面談が実施されます。その後、問題が無ければ破産手続きが開始されます。
5、一定の資産がある場合は財産の売却を行う
不動産など一定の資産があると判断された場合はその処理を行います。その際に裁判所に「予納金」を治める必要があります。予納金の額は個別の状況で異なりますが、おおよその相場は10〜30万円程度です。
6、問題なければ免責確定(借金がなくなる)
債務の返済義務はないと判断された場合は、裁判所から免責許可通知が弁護士経由で届きます。この段階で初めて借金の返済義務がなくなります。
自己破産手続きにかかる期間は、弁護士へ相談してから最短2~3カ月程度です。高額の資産を保有していたり、手続きが遅れたりすると6カ月程度かかることもあります。余裕を持って手続きを開始しましょう。
自己破産の体験談を紹介!
ここでは、自己破産者の体験談を紹介します。実際に思い悩んで思い切って自己破産した方もたくさんいらっしゃいますので参考にしてください。
自己破産すると家族や会社にバレる?
自己破産しているのが家族や会社と言った周りにばれてしまったら「あの人とは関わらない方が良い…。」「あんなまじめに見えて自己破産してたんだ…。」などと言った風評被害も起こりかねません。
自己破産をすると、免責許可決定などの書類がご自身もしくは自己破産者の代理人弁護士に郵送されます。
また、直接自宅に送られるのではなく「裁判所→弁護士事務所→本人」という流れが原則です。突然自宅や会社に自己破産が通知されることはありません。
しかし、「妻」や「夫」がいる場合は自己破産時に配偶者の収入を証明する書類が必要です。そのため、配偶者には隠すことは出来ないと思ってください。
どんな時にバレるの?
配偶者以外に自己破産がバレる可能性は低いものの、いくつかバレてしまうパターンがあります。
fa-pencil免責許可決定の書類を見られてしまった
自宅に弁護士経由で送られてきた書類を置いており、たまたま見られてしまった場合は残念ですがバレてしまいます。
書類に関してはしっかりとしまっておけばみられる可能性は少ないでしょう。大切な書類なので、管理はしっかりと行うことが大切です。
fa-pencil公表の「官報」を事細かく見ている人が近くにいる場合
国が破綻者を公表しているのが「官報」というものです。インターネットにも公表されており、細かくチェックしている人がいたらバレるケースがあります。
基本的に公告文書をチェックしている人はそう多くはいません。そのためこのケースでバレるという方はほとんどいないでしょう。
fa-pencil不動産などの差し押さえ調査を近所に見られたとき
自己破産すると、保有資産の調査が行われます。たまたま近所の方に調査を見られたときは「もしかして…。」とバレてしまう可能性があります。
近所付き合いが多い方であれば、バレてしまう可能性が高いと言えるでしょう。
fa-pencil職場に借金していた場合
自己破産すると、免責決定の書類が貸主(お金を貸していた側)にも通知されます。もし職場にお金を借りていた場合は、職場に通知がいくため隠し通せません。
職場にお金を借りていない場合には通知がいくことはありません。
自己破産の
メリット・デメリット
借金がなくなると聞くと「困ったらすぐに自己破産すればいい」と考えてしまう方もいるでしょう。しかし、手続きには良い影響だけではなく注意すべき点もあります。
ここでは、自己破産のポジティブな面とネガティブな面を解説します。ぜひ確認してみて下さい。
自己破産のメリットは?
fa-thumbs-o-upこれまでの借金の支払いが免除される。
申し立てをし「免責許可」が決定されると1000万円だろうが1億円だろうが、今まで自身が抱えていた借金を返さなくても良くなります。
奨学金に関しても借金と同じ扱いのため返す必要はありません。
fa-thumbs-o-up催促や取り立てから開放される
破産手続きには法的拘束力があるため、お金を借りている人から催促がこなくなります。
また、お金を貸している側から給料や金融資産を差し押さえされている場合、判決後は満額自分の物として受け取ることが出来ます。
fa-thumbs-o-upある一定の財産は手元に残せる
自己破産=有り金全て没収されるというイメージがあるかもしれませんが、実は一部の財産は手元に残すことができるのです。
裁判所で免責が許可された後に得た金銭財産は没収されません。また、最低限の生活をしていくために必要な家具も没収されません。
つまり、ほとんどの家具は手元に残しておくことが可能です。
自己破産のデメリットは?
fa-thumbs-o-down今後5年~10年間は新規借入不可
免責許可後は、いわゆる金融事故情報が登録されることになります。金融事故情報登録期間は新たに借入できません。
事故情報が登録される期間は約10年程度とされています。10年程度は新しい借金出来ないと考えましょう。
fa-thumbs-o-downインターネット上に裁判記録として掲載される
ネット上の「官報」に破産した方のリストが載ることになります。官報をチェックしている人には破産した事実を知られてしまいます。
しかし、その件数は年間600万件以上。わざわざチェックしている方も少ないため、バレる可能性はほとんどないと言えます。
fa-thumbs-o-down高額な財産は没収される
生活するのに最低限必要な家具は手元に残るとお伝えしましたが、高額の資産である場合は別です。99万円を超える現金、20万円以上の価値を持つ宝石/不動産などは全て没収されます。
借金を全額無くしてもらっているため、高額な財産を持つ権利はないと判断されてしまうのです。
fa-thumbs-o-down職業の選択の自由がなくなる
手続き中は、一部の職業につけなくなります。制限される職業は以下の通りです。
-
- 法律に関与する職業(弁護士/司法書士/行政書士など)
- 公務員の委員長
- 企業の役員や代表取締役
- お金や資産に関わる職業(金融業界全般/旅行業/風俗業管理者/建築業など)
一方で、法律や金銭の絡まない医者や看護師、一般職などは問題なく職に就けます。また、手続き終了後は職業制限が解除されます。手続きが終われば、自由に働けます。
誰でも自己破産出来るの?
ここまで自己破産のポジティブな面・ネガティブな面について解説してきましたが、誰でも借金をゼロに出来るわけではありません。
そのため、借金400万円・月の手取り100万円で月々15万円返済している場合、返済可能と判断され自己破産は否認されます。
また「非常に大きい額の浪費/ギャブル」「財産を隠していた」「特定の借金貸し業者にのみ返済していた」「7年以内に自己破産をしている」といった場合も否認されますので注意しましょう。
自己破産は弁護士など専門家を頼ろう!
借金問題に少しでも悩んでいるのであれば、まず弁護士に相談することが大切です。1人で悶々と悩むよりも、一度弁護士へ相談したら新たな人生を歩むことが出来たという声も多数あります。
弁護士事務所の中には、無料相談を実施ている事務所も複数あります。いきなり自己破産する前に、まずは話を聞いてもらうことからはじめましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。借金が返すことが出来ないからといって安易に自己破産してしまうと、一定期間ローンを組めなくなったり、職業制限がかかったりします。
その一方で、「返さなくてはいけないお金が0円になる」「お金に関するストレスがなくなる」など、ポジティブな面があるのも事実です。
これからの生活や将来のことで、ちょっとでも悩んだら弁護士に相談だけでもしてみましょう。話を聞いてもらうだけでも事態は好転するかもしれません。